カンヌ映画祭で、映画界への長年の貢献をたたえて名誉パルムドールを贈られた仏俳優、アラン・ドロンさん=フランス・カンヌで2019年5月19日、小林祥晃撮影

 「太陽がいっぱい」「冒険者たち」などで知られ、特に日本女性の間で人気の高かったフランスの俳優、アラン・ドロンさんが亡くなったと仏メディアが報じた。88歳。

 恵まれない少年時代を過ごした後、17歳で軍隊に入りインドシナ戦線に従軍。除隊後世界を放浪し、1957年「女が事件にからむ時」でデビュー。日本では59年「お嬢さん、お手やわらかに!」で、二枚目俳優として人気を獲得した。

 魅力を決定づけたのは、60年の「太陽がいっぱい」だった。裕福な友人への嫉妬と憎悪から殺人を犯し、殺した相手になりすまして逃げようとする美しい青年主人公の鬱屈した内面を繊細に演じ、衝撃的なラストシーンとともに観客の記憶に鮮明に焼き付けられた。

 60年、ルキノ・ビスコンティ監督の「若者のすべて」で世界的名声を獲得。ジャン・ギャバンと共演した63年の「地下室のメロディー」、男同士の友情を描いた67年の「冒険者たち」、殺し屋の孤独を演じた67年の「サムライ」などの出演作が高い評価を受けた。アクションからラブストーリー、犯罪物まで、野心や執念を内に秘めた美貌の青年といった役どころを幅広く演じた。

 69年にボディーガードを殺害した容疑で取り調べを受けたことから、政財界と裏社会を巡るスキャンダルに巻き込まれ、俳優生命の危機を迎えたが、これも克服。映画製作者として、また実業家としても活躍した。81年には「危険なささやき」で監督にも進出した。

 年齢を重ねるにつれて渋い脇役もこなすようになり、「カサノヴァ最後の恋」では老醜をさらす元ドンフアンといった役にも挑んだ。一方で、98年の活劇「ハーフ・ア・チャンス」ではライバル、ジャンポール・ベルモンドさん(2021年死去)と共演、派手なアクションをこなして健在ぶりを見せた。19年のカンヌ国際映画祭では、長年の映画界への貢献をたたえられ、名誉パルムドールを受賞した。

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