フリークラスから名人戦順位戦のC級2組への昇級を決め、対局を振り返る小山怜央四段=東京都渋谷区のNHK放送センターで2024年7月15日(日本将棋連盟提供)

 将棋の小山怜央(れお)四段(31)が11日午前に放送されたNHK杯将棋トーナメントで谷川浩司十七世名人(62)から白星を挙げ、名人戦順位戦(毎日新聞社、朝日新聞社主催)のフリークラスからC級2組への昇級を決めた。感想戦後、谷川十七世名人から「頑張ってください」と激励された小山四段は「つまり『しっかりやれよ』ということ。心に刻んでちゃんと頑張りたい」と気を引き締めた。

 小山四段は2022~23年に棋士編入試験を受けて3勝1敗で合格し、23年4月から順位戦には参加しない「フリークラス」棋士となった。この日の対局は、勝てば「フリークラス」から順位戦を指せる一番下のクラスであるC級2組に昇級する条件の一つ、「直近30局以上の勝率が6割5分以上」の条件を満たす一局だった。

 対戦相手が子供の頃から大スターと尊敬する谷川十七世名人ということもあり、対局が近付くにつれて緊張していったという小山四段。自身は東日本大震災で岩手県釜石市の自宅が津波で流され、谷川十七世名人は神戸市東灘区の自宅で阪神大震災に遭った。

 対局中は「谷川先生も震災被災者で、東日本大震災の後にも被災地に来ていただいた。いろいろな点でつながるものがある」という思いに浸っていた。だが、高校生だった当時、谷川十七世名人との指導対局に「平手(ハンデなし)で」と申し出たこともあり、「失礼なことをしてしまったことばかり頭にあり、他のことは考えられなかった」と苦笑する。

 対局では途中で奪ったリードを守り切って見事勝利。「自分でも信じられない。最後の数手はドキドキしながら指していた」と喜びを爆発させた。

 プロ養成機関の奨励会を経ていない棋士が順位戦に参加するのは戦後初めて。小山四段は25年度の第84期順位戦から参加し、一番下のC級2組から新たな一歩を踏み出す。【丸山進】

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