若い世代に「昔のテレビは漫才より落語の方が断然多かった」と言っても信じてくれないだろう。流れを変えたきっかけは1980年代前半の「漫才ブーム」。上方漫才、関西弁が東京経由で全国に認知されたから、というのも一因だ。
ではなぜ、上方落語は東京でもっと広がらないのか。以前は桂米朝さんや桂枝雀さんが、そして現役では桂文枝さん、桂文珍さん、笑福亭鶴光さん、笑福亭鶴瓶さんらベテランが東京でも気を吐くが、定期的に上方の芸も見られれば、その面白さはさらに浸透するのではないか。
そんな試みが東京・浅草、浅草寺すぐ近くの木馬亭で8、9日、「演芸サマーフェスティバル2024」と題して開かれる。
木馬亭では昨年、「ツキイチ上方落語会」が開かれたが、今年は浪曲や講談など東西のバラエティーに富んだ内容で夏に2日間、公演を開くことにした。落語、講談、浪曲、そして無声映画で、東西の若手と実力派が共演。昼夜計4公演で東西の幅広いジャンルの面白さを体験、堪能できる。
特に、35歳以下は各公演前売り1000円(当日1500円)と、破格の木戸銭にした。「若い人に来ていただきたい。学割を考えたが、30歳以下の方が少ないので、思い切って35歳以下にしました」と企画委員会の和田尚久さんは話す。
8日午後1時半からは歌舞伎や文楽で演じられる「夏祭浪花鑑」の特集で、桂吉坊さんの「身替り団七」(小佐田定雄・作)、月亭文都さん「夏祭浪花鑑」ほか。9日午後1時半からは「上方の怪談噺(ばなし)」の特集で、桂かい枝さんの自作「丑(うし)三つタクシー」や露の新治さん「雪の戸田川」ほか。
夜公演(午後6時半から)は「東西厳選演芸会」。8日は名古屋が拠点の旭堂鱗林さん、9日は2019年入門・25歳の若手、旭堂一海さんと、講談がそれぞれトリを取る。
出演者はほかに、上方からは笑福亭たまさん、東からは三遊亭兼好さん、三遊亭萬橘さん、浪曲の玉川奈々福さん、国本はる乃さん、無声映画の坂本頼光さんら。
オリジナルの講談「藤井聡太物語」が好評の鱗林さんは「木馬亭は初めて。若手でトリを出させてもらいありがたい。藤井聡太物語もかけさせてもらいます」、一海さんは「トリは恐れ多いこと。大阪らしいものをかけたい」と話す。
三遊亭兼好さんは「他のジャンルとの共演は勉強になる」、笑福亭たまさんは「(太鼓など)鳴り物を打つため4公演全部出ます」、玉川奈々福さんは「木馬亭は浅草で一番古い演芸場。こういう演芸会はうれしい」と話す。
詳しくは公式X(ツイッター、@mokubatei_)。【油井雅和】
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