張り詰める空気の中、札を取り合う。

主将:(札を取る)音がするじゃないですか。それが自分が一番、その場で早かったなって思う時がたまにあって、そういう時がめっちゃうれしい。

高校かるた界の頂点を目指して。

一瞬の勝負にかけた高校生たちの最後の夏が、今始まろうとしている。

■“かるたの甲子園”最多出場 名門「かるた班」

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かるたの聖地とされる大津市にある滋賀県立膳所(ぜぜ)高校。 長い伝統を持つこの学校では、“部活動”を“班活動”と呼んでいる。

中でも古い歴史を持つのが“かるた班”。

「かるたの甲子園」と呼ばれる「全国高校かるた選手権大会」への出場は、全国最多の40回目。

今年もかるた班の最後の夏がやってきた。

伝統の膳所高校かるた班で主将を務めるのが、3年生の小嶋彩月(こじまさつき)さん。全国大会に参加する1697人のうち、たった76人しかいないA級選手の1人だ。

1年生の時から全国大会に出場し、ついに今年は主将として大舞台に立つ。

小嶋彩月さん:膳所高校が全国大会にずっと出場していたので、膳所高校に行くってずっと中学から決めていた。(札を取る)音がするじゃないですか。それが自分が一番、その場で早かったなって思う時がたまにあって、そういう時がめっちゃうれしい。

彩月さんがかるたに出会ったのは小学一年生の時、姉のかるた体験についていったのがきっかけだった。

かるたに打ち込む彩月さんについて、父・行心さんは次のように話した。

彩月さんの父・小嶋行心さん:何十回と泣きながら。何十回とそういうことを経験して、勝ってる回数よりも負けてる回数の方が絶対多いので。ようやくそれが実りつつあるかなって。

小嶋彩月さん:結果の目標でいうなら優勝はしたいし、決勝に進んで優勝するっていうのは目標なんですけど。楽しんでやりたいなって思ってます。

妹の成長をそばで見てきた姉の茅冬さんも、感じていることがあるようだ。

彩月さんの姉・小嶋茅冬さん:あんまり自分の思ってることを家では言えても、チームでは言えないってこともあったりしたんで、それは色々プレッシャーとかもあったのかなって。

団体戦は、孤独な戦いではない。3年間を共に過ごしてきた仲間がそばにいる。

小嶋彩月さん:自分の味方が札を取ってたら、ナイスというのを目で伝える。逆に取られていたりとか、お手付きした時も、『次取るよ』って励ますために目を合わせてニコニコして、思いを伝えています。

部員およそ50人のうち、試合に出場できるのはたったの5人。

チームを陰で支える選手もいる。かるた班の班長を務める越前美桜(えちぜんみお)さんもその一人。5人の中には入ることができなかった。

越前美桜さん:(試合に出ないメンバーは)自分のチームの試合ってほとんど見ないんですよ。その次に当たりうる学校の特徴の偵察みたいなことをするんですけど。私たちは私たちの仕事をがんばるから、(出場する)5人はいつも通り仲良くがんばってきてほしいなって思います。

相手選手の組み合わせを予想し、出場するメンバーに伝える。それも団体戦の勝利のために必要な仕事だ。

立場は違っても、チームの勝利のために。彼女たちの最後の夏が迫っていた。

■「自分のチームの試合は見ない」相手チームの偵察でチーム支える“補欠”の班長

大会前日に開会式が行われた。

出場選手:私たち高校生選手一同はかるた道の精神に則り、苦しい思いも悲しい想いもたくさんの時間を過ごしてきた仲間と共に、全員の青春の1ページとなるよう、最後の1枚まであきらめることなく競技することを誓います。

その後、膳所高校のかるた班だけで集まった。

仲間の1人に「目をつむってほしい」と言われ、まぶたを閉じて待つ出場予定のメンバーたち。

「目を開けてください」の言葉で一斉に目を開けると、班長の美桜さんが手作りしたお守りが置かれていた。

「え!すご!」

「うわ、それぞれ違う」

思いがこもったお守りを見て、それぞれに笑顔を見せていた。

越前美桜さん:かるたをイメージしたキャラクターを作っていて、(お守りの)裏に1人1人の選手の名前を書いていて。(主将・彩月さんの名前が書かれたお守りを持ち)主将の名前です。

主将ならではの『絶対勝たなきゃ』というプレッシャーもあると思うし、でも私たちは彼女が高校入る前から、かるたをがんばってきたことも知ってるし。

みんなで円陣を組み、大会本番に向けて気合いを入れる。

「膳所ファイト!」

■ついに本番 序盤から実力を発揮するも…

そして大会当日。

一回戦は宮崎西高校との対戦。序盤から実力を発揮し、5対0で膳所高校の勝利となった。

そして、二回戦の相手となったのは福岡高校。

対戦が進むにつれ、次第に押されていったのは膳所高校だった。相手の札が着実に減っていく。

主将の彩月さん、敗北。2対3で膳所高校の敗退が決まった。

大会を終え、さまざまな思いが涙となってあふれた。

小嶋彩月さん:1年生(の時)が一番強かった…自分がな…。普通に勝ってたもんな、無心で取ってたから。

主将ができなかった気がする…分かってたんやけどさ、私が崩れたらみんな崩れるの。だから、ごめんって感じ。決勝に行ったら(試合に)出そうと思ってたのに、ごめんね。

3年生で主将の彩月さんにとって、膳所高校かるた班の、最後の夏が終わった。

小嶋彩月さん:みんな信頼してくれてたのが本当にありがたかったし、自信にもなってたので、本当にそこはうれしかった。そこまで私を…実力がめっちゃあるわけではない私をすごく信頼して主将にしてくれたことに、本当に感謝したいです。

“一瞬の勝負”を積み重ねた3年間。その経験はこれからの彼女たちを支えていくはずだ。

(関西テレビ「newsランナー」2024年7月23日放送)

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