文楽を代表する大名跡を襲名した豊竹若太夫 (水沼啓子撮影)

人形浄瑠璃文楽の豊竹呂太夫改め十一代目豊竹若太夫襲名披露興行が4月の大阪公演に続き、5月9日から東京・足立区のシアター1010で行われる。若太夫は300年以上続く大名跡で57年ぶりに復活した。

襲名を前に開かれた記者懇親会で若太夫(77)=当時、呂太夫=は、「文楽は世襲制ではなく実力主義なので、私の祖父が(十代目)若太夫だったからといって、自然に継いだわけではない。2年前、文楽の太夫としての最高峰の『切語り』になり、やっと継げるという自信が芽生えた」。

その上で、「若太夫を継いで終わりではなく、襲名してからも、もっとお客さまに感動していただける舞台をつくりたい」と意気込みを語った。

入門前は「シュールレアリスム(超現実主義)みたいなものを目指す小説家になりたかった。祖父は太夫をやっていたが、義太夫はもうはやらん、と思っていた」と振り返る。しかし、改めて文楽を見て、その思いが変わったという。

「美術がすごくいい。他とはちょっと違う、いい色使いやな。そうすると人形遣いさんも含め、抽象画に思えてきた。これこそシュールレアリスム、アバンギャルド(前衛芸術)だと。太夫もソウルミュージック。こんな芸能ないやんか、と改めて衝撃を受けた」

20歳で入門。70歳で呂太夫を襲名した。「文楽人形のかしらには子供、侍、悪い侍、おばあさん、悪いおばあさん、若い娘、既婚の女性など、さまざまな種類があるが、そのかしらに応じた音程がきっちり決まっている。入門して50年くらいたって、それがやっと整理できてきた」

今回、襲名披露狂言として、時代物「和田合戦女舞鶴・市若初陣の段」が上演される。5月27日まで。問い合わせは、国立劇場チケットセンター(0570・07・9900)。

(水沼啓子)

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