キャスターの大越健介さんへのインタビューに訪れたのは、テレビ朝日系「報道ステーション」の放送直後。NHKで「ニュースウオッチ9」「サンデースポーツ2020」のキャスターを務め、3年前に報ステの「顔」に抜てきされた。
番組の出演以外にも、週末のルーティンがある。その週に起こった出来事などを題材にコラムをつづり、番組ホームページにアップしてきた。その「仕事場」から発信された約70編が、「ニュースのあとがき」(小学館・1870円)という一冊の本になった。
ニュースの伝え手として平日を駆け抜けた後、落ち着いて報じた中身を振り返り、自分の中で咀嚼(そしゃく)し、時に考察を加える。例えば、ロシアのウクライナ侵攻に憤り、プロ野球や大リーグで活躍した松坂大輔さんの現役引退に思いをはせる。執筆するのは「家の台所。テーブルで書いています」。
今の職場をどう感じているのか。「NHKと民放で違いがあるのかな、と想像はしていました。でも、日々のニュースを伝えるという番組の本質は変わらない。それと、スタッフの士気の高さに自分もあおられ、乗せられる形でここまで来ましたね」
書き続けるのは、読み手に向けてだけでなく、自分のためでもある。キャスターとして、報じるニュースを巡ってコメントもする。「言葉を選び、文章を紡ぐという作業が相乗効果を生んでいると、自分では思っています」。書くことは自分にとって「貴重な、大切な時間」。多忙な中でも、その思いは揺るがない。
コラムには、自身も周囲のスタッフも「テレビ屋スピリッツ」の持ち主だと記す。「今」まさに起きている出来事を、プロの技術で伝える。それはテレビだからこそできる仕事だと感じている。「ニュースは一番、テレビの持つ強みを出せると思っています。テレビの勢いが低調な時代と言われることがありますが、僕はあまり気にしていません」。テレビ屋としての挑戦と「あとがき」の執筆は、これからも続く。【屋代尚則】
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