江戸三大祭りの一つに数えられる、日枝神社(東京都千代田区)の山王祭で使われてきた掛け軸が、書家で幕臣としても知られる山岡鉄舟(1836~88年)の直筆だと確認された。同区は有形文化財に指定し、18日から8月18日まで、区立日比谷図書文化館で公開する。
鉄舟は幕末から明治にかけて活躍した書家。1868年に現在の静岡市で西郷隆盛と面談し、江戸城の無血開城につなげた幕臣の一人として知られる。
掛け軸は、絹地に墨で「日枝神社」と書かれ、「正四位山岡鐵(てつ)太郎拝書」と本名で落款がある。鑑定した二松学舎大講師の寺内進氏によると、晩年の1885~86年ごろの作品とみられるという。
掛け軸は千代田区の「麴(こうじ)町五丁目町会」が保存しており、山王祭で隔年で設置される各町会の御神酒(おみき)所に飾っていた。町会に、「(掛け軸は)鉄舟本人が書いたものではないか」との声が寄せられたため、区に相談した。区は、鉄舟の書の研究で知られる寺内氏に鑑定を依頼し、真筆だと判明した。
区は、書家としての技術が凝縮され、鉄舟の到達点を示す作品だと評価。鉄舟の作品が祭礼で使われ続けてきたことも珍しいとしている。ただ、町会と鉄舟の関係を示す史料は確認できておらず、制作や入手の経緯は不明だという。
現在、麴町五丁目町会の会長を務める湯田嘉彦さん(77)は「本物だとは思っていなかった」と驚く。副会長の片岡勝吾さん(65)は「一般公開されるので、多くの人に見てもらいたい」と話す。山王祭では今年から、レプリカを使うことにした。
区文化財事務室の学芸員の山田将之さんは「地域で長い間守られ、祭礼で使われてきた史料。大切に保存し、後世の方々に伝えていく」と話した。【小林遥】
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