忙しい家事の合間、アイロンがけをしながら好き勝手にテレビと会話。でも頭の中は家族のことでいっぱい。今夜の夕食、明日の朝食、今朝の息子の言動、公共料金の支払い、夫のこと少々。家族こそが世界で、世界の全ては、母ちゃんの体内に内包されている。息子の自立とは、母ちゃんのその「愛」という名の世界の壁を打ち破り、外の世界へ出ていくことなのかもしれない。

 ミセス・クルナスの息子もきっと、自立する時が来ただけだった。ただ、タイミングが悪かった。イスラム主義組織タリバンとの関係を疑われ、グアンタナモ収容所に収監されること5年。そんなこと、母ちゃんが許すはずがない。壊れた世界を修復すべく、ブッシュも米国もタリバンもテロも、クルナス夫人は全てを内包し、母ちゃん色に染める。愛じゃないことまで愛で理解し、大丈夫にしようとする。母は、すごい。(桜坂劇場・下地久美子)

◇同劇場で公開

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