質問に答える俳優の穂志もえかさん=東京都千代田区で2024年5月8日、内藤絵美撮影
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 米ネット配信ドラマ「SHOGUN 将軍」で高潔な武家の娘「藤」を演じ、世界的に注目を集めている俳優の穂志もえかさん(28)。中学校ではいじめを経験し、悩み苦しんでいた日々もあったという。そんな中、救いは大親友の温かい言葉だった。学校時代を振り返ってもらった。【聞き手・伊藤一博】

2人だけの楽園にいるみたい

 小学1、2年の時に同級生だった美紅(みこ)との出会いが「私という人間を作った」といっても過言ではありません。幼稚園でも同じバレエスクールに通っていましたが、仲良くなったのは1年の途中からです。

 よく2人で買い物に行って、私に似合う服を選んでくれたり、かわいいカチューシャを付けてくれたり。すごく感性が豊かな子でした。いつも2人だけの楽園にいるみたいな感覚で、学校での私たちは周囲からちょっと浮いた存在だったかもしれません。

 いたずらもいっぱいしたなあ。2人で体調不良のフリをして、保健室で待ち合わせたことも懐かしい思い出です。

「これはいじめだよ。私は味方だから」

俳優の穂志もえかさん=東京都千代田区で2024年5月8日、内藤絵美撮影
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 当時の私は人前では意志薄弱で、誰かの後ろにくっついているタイプでしたが、彼女は幼いながらも自分をしっかり持っていて、とても羨ましく感じていましたね。

 中学では、私も彼女もバレエと両立できる吹奏楽部に入りました。ところが、2年の時、ささいなことからいじめられるようになったんです。あからさまに部内で無視され続け、とってもつらかった。

 それを知った担任の先生が「ひとまず学校に来なくていいよ」と心配してくれたほどです。実際、リストカットしようとカッターを握り、思いとどまったこともありました。

 そんな中、美紅だけは常に寄り添ってくれたんです。「これはいじめだよ。でも私は味方だから」。はっきりそう言ってくれて救われました。掛け替えのない親友だと実感しました。高校からは別々になりましたが、今でも本音を語り合える仲です。

 その後、いじめの発端となった子たちとは対話の末、奇跡的に和解しましたが、卒業までずっと私を無視し続けるグループもありました。いじめを受けた経験から、不当に扱われている人々への想像力が身についたと思います。また、美紅との交友を通じて、広く浅くではなく、信頼できる人と深く付き合うことの大切さを学びました。

 この春、お世話になった芸能事務所を辞めて、一人でマネジメントを始めました。一昨年、ドラマ撮影のためカナダで8カ月間暮らして、現地の方々のマイペースな生き方に共感したからです。大変なことばかりですが、自分の人生は自分で切り開きたい。不安とワクワク感が交錯しています。

ほし・もえか

 1995年、千葉県生まれ。上智大卒。2月に配信が始まった米制作ドラマ「SHOGUN 将軍」で誇り高く凜々(りり)しい武家の娘を好演し、世界的に反響を呼んでいる。主な出演映画に「少女邂逅(かいこう)」「街の上で」など。猫と大相撲を好む。

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