宮沢和史さん=提供写真

 「THE BOOM」でメジャーデビューし、1993年には「島唄」が大ヒットしたシンガー・ソングライターの宮沢和史さんが、音楽生活35年の今年、コンサートツアーや記念アルバムに取り組んでいる。節目の年、そして沖縄への思いなどを宮沢さんに聞いた。【聞き手・油井雅和】

 ――4月にリリースした35年記念アルバム「~35~」は藤巻亮太、TRICERATOPS、坂本美雨といったアーティストとの共演が話題です。この35年、これだけジャンルが広がったのはなぜでしょう。

 ◆自分に自慢できることはあまりないですが、あるとすれば音楽のジャンルみたいなものに関係なく、いろんなつながりが持てたことが自慢ですね。タンゴのグループにもボーカルで呼ばれたり、ロックフェスにも出たり、ジャズのイベントでも歌い、ブラジルのフェスにも呼ばれたり。ロックやフォークにあこがれて音楽を始めましたけど、音楽全般が好きなので、いろんな人と関われて、出会っただけじゃなくて、作品を一緒に作れるような、垣根を越えて交流できました。

 ――「愛と平和を歌う」と名付けたコンサートを開いていますが、どういう思いでしょうか。

 ◆僕なりの愛という概念と平和という概念をただ歌う、ということです。皆さんが何を思うかは自由です。きっかけはウクライナの戦争だったりするんですが、どうして人間って憎しみ合うんだろう、差別できるんだろう。地球という同じボートに乗っているのに、ちょっと理解できないんですよね。パレスチナの問題にしてもそうです。僕は「そばにいたい」という曲(92年・THE BOOM)で「同じ舟に乗る僕らはなぜ憎しみ合う」と歌ったんですが、30年たってもまだ同じなのかと。

 ――「楽園」という言葉も多く出てきます。「楽園」という曲があり、今回のコンサート名も「君と探してる楽園」。「風になりたい」にも「楽園じゃなくても」という一節がありますね。

 ◆「楽園」というと、幸せとか、遠くにあって努力をしたり、時には運が味方しないとたどりつけないユートピア、というイメージがありますけど、そこに行きたいとか、この伴侶や仲間たちと一緒に行こうという、その道程が、きっと楽園だと思うんですよね。たとえ、たどりつけなかったとしても。そう思うと、もっと人生楽しくなれるし、幸せっていうものは遠くにあって、いくら背伸びしても届かないと感じるけど、それは気付いてないだけで、もっと身近に幸せっていっぱいあるはずです。

 ――三線(さんしん)のさおの材料、黒木(くるち)を植え、育てる「くるちの杜(もり)100年プロジェクト」を2012年から沖縄県読谷村で続けています。

 ◆はい、先日もくるちの黒檀(こくたん)を植えました。毎月第3日曜日にみんな集まって汗かいて草刈って、アイスクリーム食べてハッピーな顔して、「おっきくなったねえ」なんて会話をしている瞬間が、ものすごくみんな癒やされてるし、平和を享受しています。小さいことかもしれませんけど。

 ――甲府市出身の宮沢さんにとって、沖縄との距離、位置はどういう思いがありますか。

 ◆若いころはいつか沖縄で暮らしたいと。その夢は捨ててないんですが、どっぷり入ってしまうと見えなくなるものもある気がするんです。ウチナーンチュ(沖縄の人)になりたいなと思ったことはないし。僕は山梨というふるさとがあるし。だけど、沖縄の人も気がついていない沖縄のよさとか、問題点も、少し離れていると見えるので、それを見たら、僕は伝えていくという役割なのかな。

 今まで「沖縄を応援してます」「沖縄大好きです」と言ってきましたが、そうはいっても、沖縄が抱えている問題とか、ウチナーンチュが変わるべき場面もあるので、少し耳は痛いかもしれないけれど、沖縄の人にこれは言っておきたいなということを、そろそろ言っていく段階なのかなと。ここは変えた方がいいんじゃないかとか、本当にこれでいいんですかとか。

 それは、新アルバムの中の曲「Drawing it」にも書いているんですが。50年後、100年後、沖縄はこうあってほしいって、まず描いてみて、みんなで話し合って、そうすることでそこへ行けると思うんですよね。今のうちに「沖縄の未来はこうあるべきだ」って、県民一人一人が描いて意見をぶつけあう、するとそこへ行けると僕は信じたい。そういう歌を作ったんです。

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 宮沢和史音楽生活35周年コンサート「君と探してる楽園」は25日午後5時半、東京・日比谷野外音楽堂▽6月1日午後4時、大阪・服部緑地野外音楽堂。「ふるさと山梨にて愛と平和を歌う Love Songコンサート2024」は6月9日午後5時、甲府・武田神社甲陽武能殿。

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