「歌舞伎町大歌舞伎」で新作「福叶神恋噺(ふくかなうかみのこいばな)」の脚本を担当した小佐田定雄さん=東京都新宿区で、油井雅和撮影

 東京・新宿の歌舞伎町で、意外にも初の歌舞伎公演「歌舞伎町大歌舞伎」が26日まで、昨年開業した東急歌舞伎町タワーにあるTHEATER MILANO―Za(シアターミラノ座)で開かれている。歌舞伎町は、戦後焼け野原となった街の復興事業案で、歌舞伎の劇場を中心としようとしたことから名付けられたが、実現しないまま地名が残った。今回、劇場開業1周年を記念して「歌舞伎町での歌舞伎」が実現し、中村勘九郎、七之助兄弟らが出演する。脚本を担当した上方の落語作家、小佐田定雄さんに聞いた。

 ――歌舞伎町での歌舞伎が今までなかったのは不思議です。

 ◆歌舞伎町にふらっと来た人にも見てほしいので、初めて見る人にも分かりやすいものを、ということで(話が来た)。新しい劇場ができたのは知っていたけれど、まさかそこで歌舞伎をやるとは思いませんでした。

 ――歌舞伎座などと違って、会場には歌舞伎に付き物の花道がないですね。

 ◆それはうまいこと(演出で)考えてますから。見てのお楽しみです。

歌舞伎町大歌舞伎のポスター

 ――歌舞伎通にも、歌舞伎を見たことがない方にも、楽しんでもらいたいと考えているそうですね。

 ◆両方いけます。歌舞伎が好きな人は「あっ、これ、歌舞伎のアレや」と分かるし、歌舞伎町が好きな方には「これは歌舞伎町のアレやな」と。歌舞伎を知らない人にも、歌舞伎の入り口になる内容です。

 ――歌舞伎を知らない人でも知っている中村屋兄弟の勘九郎さん、七之助さんが奮闘していますね。

 ◆あの2人はサービス精神が旺盛ですから。若い(26歳の)中村虎之介君(父は中村扇雀)が稽古(けいこ)で2人にしごかれていて、見ていて感心します。

 ――今回の演目では、小佐田さんが作った落語「貧乏神」をもとにした新作歌舞伎「福叶神恋噺(ふくかなうかみのこいばな)」(今井豊茂演出)の脚本を担当しました。台本にも付箋がたくさん貼られていますね。

 ◆勘九郎さん、七之助さんとも「こうやったらおもしろいね」などとワイワイ言いながら稽古は進みました。「福叶神恋噺」という、いい題も付きました。歌舞伎町大歌舞伎の初めての演目名が「貧乏神」では劇場も客も嫌がるでしょうし(笑い)。

 ――新型コロナウイルス禍が落ち着いて、これからのエンタメは集客も大事ですね。

 ◆歌舞伎町にふらっと来て、映画見ようかな、という若い方に、歌舞伎もやっているんだ、と対抗できるようにしないと。

 ――落語を芝居にする難しさとはどんなところでしょう。

 ◆落語は全部言葉で伝えますが、芝居はとにかく映像として見せないといけません。落語と芝居で、同じところもあれば、違うところも、落語にはない部分もあります。特に女性が出てくる部分は違いますね。落語は男がやりますが、芝居は七之助さんがきれいな女形でやりますから、男がほろっといっちゃいます。

 ――そうすると、落語「貧乏神」で桂枝雀さんが演じる女性の部分とは違うわけですね。

 ◆違いますね。シチュエーションは一緒だけど、こうなるんやと。なんで(七之助さん演じる)貧乏神はこんなに深入りしてしまうんやと。虎之介君が演じる大工の辰五郎が甘えてばっかりのだらしない男なんですが、それが最後にどうなるか、が見どころです。【聞き手・油井雅和】

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