英国のバレエ学校で練習に励む(映画『マドゥ バレエ少年の夢』より) DISNEY
<雨の中で裸足でバレエを踊る動画がSNSでバイラルになった、ナイジェリア版『リトル・ダンサー』の輝ける未来>
私が踊りに夢中になったのは、ナイジェリアに住んでいた5歳くらいのときだ。とにかく踊ることが好きだった。バレエを初めて見たのは、母のスマートフォンで、いろいろな踊りの動画を見ていたときだ。すごくかっこよくて、まさに私がやりたい踊りだと思った。そこでバレエ教室に行ってみたらとても楽しかったので、続けることにした。
■【動画】SNSで大きな話題になった「雨の中でバレエを踊る」マドゥの動画/映画化された『マドゥ バレエ少年の夢』
2020年6月、雨の中でバレエを踊る私の動画がソーシャルメディアでバイラルになるまで、私の日常はごく平凡なものだった。相変わらず踊りに夢中で、放課後と週末はバレエ教室に通っていた。
あの動画は偶然撮影されたものだ。あの週はとても忙しかったから、レッスンは休もうと思っていた。でも、やることもなくて退屈だったから、やっぱり行くことにした。
教室の外で練習をしていたら、ちょっと録画しようということになった。それを先生がインスタグラムに投稿したところ、世界中に拡散されることになった。全く予想外のことで、私も家族も友達もびっくりしたけれど、母がとても誇りに思ってくれていることは分かっていた。
やがて、英バーミンガムにあるエルムハースト・バレエスクールで、本格的にバレエを学べることになった。踊りは楽しかったけれど、家族と離れて暮らすのは大きな変化だった。天気もナイジェリアとは大きく違った。
「男がバレエをする」ことへの批判や偏見を乗り越えて
当初は家族が恋しくて、しょっちゅうメッセージを送ったり、電話をかけたりしていた。でも、寂しいからといって落ち込まないように努力した。「しっかりしろ。バレエをやるためにここに来たんだろう。ずっとやりたかったこと、自分で選んだことじゃないか。それに(大きな変化に)うまく対処しているぞ」と、自分を奮い立たせてきた。
幸い、私はとても良い人たちに囲まれている。2学年上のアンドレは仲の良い友達で、私がホームシックになったときはいつも助けてくれる。ただ非常に難しいのは、ネガティブなコメントに耳を貸さないようにすることだ。
バレエを始めたとき、多くの人がけげんな顔をした。バレエなんて男がやることではないし、特にナイジェリアではあり得ないというのだ。学校の友達も、私と話をしてくれなくなった。そのせいで、自分はどこかおかしいのではないか、バレエをやめるべきなのかと思った時期もあった。とても孤独だった。
でも、母が私の味方をしてくれた。いつも私を励まし、ずっとやりたかったことなのだから、いま諦めてはいけないと言ってくれた。だからなんとか立ち直ることができた。
ドキュメンタリー映画『マドゥ バレエ少年の夢』が公開
最近、私のドキュメンタリー映画『マドゥ バレエ少年の夢』が公開された(ディズニープラスで配信中)が、それを見た人たちには、何であれ自分の夢に向かって突き進み、励まし以外の言葉には耳を傾けるな、というメッセージを受け取ってほしい。
今の私には特別大きな野望はない。とにかく踊りがうまくなりたいから、今はそこに集中している。将来のことばかり考えると、踊りに集中できなくなってしまう。
これからも踊りは私の人生の大きな位置を占めることになると思うけれど、映画の撮影中、興味をそそられるものがいろいろあって、踊り以外にも選択肢があることが分かってきた。演技とかね。
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