私が何を考えているか。本当のことなんて、誰も知らない。言いたくないことは絶対言わないし、相手のことを思って言わないこともある。物事をうまく運ぶため、思っていないことを言うこともあるし、うそだってつく。世の中は、そういう真実とは違うものであふれている。

 思春期の少年、少女たちと、仕事熱心な教師・カーラの物語を見つめながら、ふとそんなことを思った。その中学校では、盗難事件が相次いでいた。分かっていることは、それだけ。学生も教員も保護者も、みんな疑心暗鬼。

 ある日、果敢に真実に挑んだ正義感あふれるカーラが、事件解決の糸口を見いだした瞬間、事態はさらに悪化する。全員の妄想が爆走。真実を置いてきぼりにして、学校中がスキャンダルに浮足立つ。それはまるで、現代社会の縮図のようにおぞましい。(桜坂劇場・下地久美子)

◇同劇場で5月17日から

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